フローレンスへこの4月に新卒事務局スタッフとして入社した鶴見です。
子どもが熱を出して保育園に行けず、親が何日か仕事を休んで看病したら会社をクビになった
子どもが熱を出すのはあたりまえのことなのに、それで仕事を失う社会を変えたい。
子どもが病気の時も親が安心して働ける社会を実現したい。
そんな思いから2005年にスタートしたフローレンスの日本初「訪問型病児保育事業」。
2005年に始まった病児保育事業は2021年5月になんと、累計病児保育件数90,000件を達成しました!
親子の「困った!」に寄り添い続けるフローレンスの病児保育の現場は、一体どういう風に成り立っているのか知りたいと感じた私は、保育スタッフが現場で独り立ちする前に必ず受講する新人研修の一部に参加しました。
研修前に抱いていた思いなどを踏まえて、研修や保育現場の様子をお伝えします!
研修前の不安やとまどい
今回、新人研修を受けるにあたって「そもそも何を学ぶのだろうか」という思いが心の中にありました。
その理由に、「こどもレスキュー隊員(※)」がどのようなことをしているのか、どのように親御さんやお子さんと関わっているかなどは全く分からない、現場に関する知識ゼロの状態だったからです。よって、今回の研修では何を学ぶかの想像がつかなかったのです。
※フローレンスでは訪問型病児保育スタッフのことを「こどもレスキュー隊員」と呼んでいます。
今回は座学研修、そして実際にお預かり先のご自宅に足を運ぶ現場研修の2つの新人研修(※)に参加しました。特に2日目の現場研修に対する不安が強くありました。
※実際の新人研修は、約2週間~1ヶ月程度、座学研修と現場研修の他、フローレンスで運営する保育園での保育実習を実施しており、着実にそして確実に、スキルを身につけられる体制を整えています。
その不安は、病気のお子さんへの対応や距離感、関わり方、さらには医療的な観点からの対応方法、コロナ禍での感染症対策など、実に様々なことに対してでした。
また、私自身子どもは好きですが、親御さんのいない同じ空間で何時間も一緒に過ごすことを考えると、お子さんと仲良くできるのだろうか、一日中泣かれてしまったら…という思いもありました。
そんな不安やとまどいを抱いたまま研修を迎えました。
不安を解消してくれた座学研修
なんと…研修前にモヤモヤしていた感情は座学研修を通して一気に解消されたのです!
それは、配られたガイドブックには研修前に感じていた不安要素がすべて書かれていました!それだけではなく、その不安要素に対する対処法が細かく明記されていました。
座学研修だけでここまで不安解消されるとは全く思ってもいませんでした。
今回配られたガイドブックは2冊(実際の新人研修では4冊配布)で、その他の資料としてこどもレスキュー隊員・親御さんがそれぞれ記入するシートや与薬依頼書、チェックリスト表、災害時対応方法に関するものなどがありました。
ガイドブックには本当にきめ細かいことまでが集約されており、このガイドブックを見るだけで当日の内容がある程度把握できるようになっていました。
研修内容は、まずリスクマネジメントについての動画を視聴し、その後ガイドブックに沿って学んでいくというものでした。
座学研修では現場の想像がつきにくいと思われる方もいますが、講師の方は実際にこどもレスキュー隊員として経験を積まれている方のため、体験談や具体的なポイントを交えて分かりやすく進めてくれました。
そのため、何に気をつけるべきなのかまでを具体的に落とし込むことができました。
そして、この研修の中で印象に残っていることの1つに「病児保育憲章」というものがあります。
「病児保育憲章」
①子どもの病気は丈夫な体を創るために必要なプロセスです。だから誰も悪くありません。
②子どもの病気は親だけでみるべきものではありません。だから安心して病児保育のプロに任せていいのです。
③子どもの病気は親子のピンチ。ピンチの時は、みんなで助ける社会が良い。だから病児保育は社会にあってあたりまえのインフラです。
この病児保育憲章は利用会員の皆さん、こどもレスキュー隊員のためにできたもので、病児保育を取り巻くすべての人に病児保育のあり方を理解してもらうためです。
私は病児保育憲章の1番である「子どもの病気は丈夫な体を創るために必要なプロセスです。だから誰も悪くありません。」という言葉が特に響きました。
私の今までの考えに、子どもの病気に対して肯定的な考えの視点はなかったからです。
子どもが病気をするのは仕方ないことだと思ってはいましたが、その先にある「丈夫な体を創るために必要なプロセス」という考えにはなったことはなく、子どもにとって病気というのは大切なことであると病児保育憲章を通じて知ることができました。
また、「困った時にはお互いに手と手を取り合い、助け合う」ということの大切な考えを学びました。
私は、人はお互いに助け合っていかなければ生きていくことはできないと思っています。
しかし、手と手を取り合い助け合うということは実際はそう簡単なことではありません。
相手が困っていたとしてもそこに信頼というものがなければ、助け合うことは難しいからです。さらに、コロナ禍である現在はより人と人との関係が希薄になっているため、手と手を取り合うこと自体とても難しいのです。
だからこそ、親子のピンチに手を差し伸べる病児保育はなくてはならないものだと病児保育憲章を通して強く感じました。
いざ、現場研修当日!
現場研修では実際のこどもレスキュー隊員への保育依頼と同様に、前日の夜に本部から当日のお子さんの情報に関して連絡が流れてくるようになっていました。
翌朝携帯を確認すると、前日の夜に連絡があった保育依頼のキャンセル連絡が来ていました。このままお預かりがないのか、それとも新たな保育の依頼があるのか。
いつでも出られるように待機していると、新たな保育の依頼の連絡が入りました。
「新たな訪問先ですが、前日依頼していた保育開始時刻より30分早まったため、すぐに情報に関するメールをお送りします。」と言われたので、大急ぎで身支度を終わらせ、連絡のあったご家庭へと向かいました。
事前情報にはお子さんの情報だけではなく、ご家庭までの道順についても細かく記載があるものの、初めて行く場所であるため、時間通りに訪問先に到着するか不安でした。
無事に訪問先に到着したその瞬間は本当にほっと安心しました。
しかし、この時に感じた事がありました。
それは、いつどこで何が起こるか予測がつかないこの職業は責任感・緊張感がなければ成り立たないと。
ご家庭に向かうまでの詳しい情報提供をしてくれますが、もしかすると移動中に道に迷う可能性、もしかしたら公共交通機関の遅延などにより訪問時刻より遅くなる可能性は常にあるからです。
働く人誰にとってもこの可能性はあるかもしれませんが、病児保育では待っている親子がいます。だからこそ、責任感・緊張感が常にあるのです。
お部屋に入ると、知らない人が家に入ってきたことへの恐怖心なのか、お子さんは泣いていました。
その時、こどもレスキュー隊員の方は物怖じすることなく「辛いよね、涙出ちゃったね」とゆっくり近づいて話しかけていました。
その姿を見て、お子さんに寄り添えるこどもレスキュー隊員の存在は親御さんにとって計り知れないほど有り難い存在なのではないかと思いました。
親御さんとの引き継ぎでは、こどもレスキュー隊員の方は準備物の確認や、与薬依頼書の確認、お家の使い方など細部に渡って質問していました。
引き継ぎで確認すべきことはチェックリスト表があるため、入社して間もないスタッフでもきちんと確認することは可能です。
ですが、目の前にいる親御さん・お子さんの様子を的確に判断し、引き継ぎをスムーズに行うことはお子さんと同じ時を過ごす上で非常に重要なことです。
その後、引き継ぎが終了し、親御さんは職場へと向かわれました。
親御さんと離れてからお子さんはずっと泣いていましたが、こどもレスキュー隊員の方が抱っこしたり目を見て話しかけ、その子の応答にしっかりと応える中で少しずつ少しずつ距離が縮まっていくのが分かりました。
もし、不安なことや何かあったとしても専門の看護師やサポートスタッフが本部にいてくれるので、1人で全てを抱え込まなければいけないということはありません。
なので、こどもレスキュー隊員はお子さんに対して全力で向き合うことができるのです。
お子さんの熱が午睡後に上がり容態が変化したため薬の投薬を行いました。この時も本部の方と連絡を取り合い確認をした上だったので、1つ1つ慌てることなくこどもレスキュー隊員の方は行っていました。
その後無事に親御さんが帰って来られて、今回の現場研修は終了しました。
2日間の研修を通して
今回2日間の研修を通して、こどもレスキュー隊員の大変さを知りました。同時にやりがいや心温まる瞬間にも出会うことができました。
前職では幼稚園教諭として働かれていたこどもレスキュー隊員の方にお話を聞くと、こうおっしゃっていました。
前の職場(幼稚園)では、子ども達になにか言われたとしても『ちょっと待ってね』や『また明日しようね』とその時その時に答えることが出来ない時もありました。それが、私としては心苦しかったんです。しかし、病児保育では1対1だからこそ、その子に向き合うことができるし、その日1日の出会いのその時間を大切にしようと思えるんです。
こどもレスキュー隊員の言葉を聞いて私は、病児保育の魅力は1対1だからこそ、その子に対してきちんと向き合うことができることなのだと気付かされました。
今後も親子の「困った!」に寄り添い、安心安全な保育を提供し続けられるよう私自身尽力していきたいと思います。