フローレンスは、こどもの虐待や貧困問題、育児の孤立・孤独など、こども・子育て領域の社会課題の解決を目指し、病児保育、保育園、障害児保育、こども宅食、赤ちゃん縁組などの数々の福祉・支援事業を運営するとともに、政策提言や文化醸成などの活動を行う国内最大規模の認定NPO法人です。
新卒でフローレンスに入社し、こどもたちのために日々奮闘する保育士のストーリーをお届けします!

佐藤 京香
4年制大学を卒業後、2022年に新卒でフローレンスに入社。入社後の約半年間は、複数園を担当する「エリア保育士」を経験し、その後現在まで「みんなのみらいをつくる保育園」にて勤務。
フローレンスに入社するまでの経緯を教えてください。

もともと保育学科じゃなくて法律学科に通ってたんです。小さい頃から保育士に憧れてはいたんですが、給料が低くて自立が大変という話を聞いて。「じゃあ、現実的な道に」と思って、法律学科に進みました。
でも、大学3年生のときに、母校の小学校で学童のバイトを始めたら、こどもと関わるのがすごく楽しくて「やっぱりこの道しかないな」と思ったんです。そこから自分で国家試験の勉強をして、なんとか受かりました。
フローレンスを知ったのは母の影響です。会長の駒崎さんのことを母がインスタで見ていて、「この保育園、すごく良さそうだよ」って教えてくれたので、「説明を聞いてみようかな」と思ったのがきっかけでした。
フローレンスのどんなところに惹かれましたか?

わたしが学生の頃に学童で働いていた時は、1クラスで先生2人に対してこどもが50人くらいいて、とにかく目まぐるしかったんです。もっと一人ひとりと向き合いたいなって思っていました。フローレンスはこどもが少人数で保育士が多いと聞いて「すごく素敵だな」って思ったんです。
実際に入社して最初に0歳児の担任をさせてもらったときも、一人ひとりと丁寧に関われる環境だなって感じました。歩けるようになった、喋れるようになった、お友達におもちゃを譲れた……そういう小さな成長がすごく嬉しくて、楽しいなと思いました。


今は、何歳児を担当しているのですか?

今は5歳児の担任をしています。0歳児のときとはまた違って、こどもたち自身のやりたいこともはっきりしていますね。
この前やった「お泊り保育」の内容も、全部こどもたちが決めたんです。「何を食べたいか」「お風呂のバスボムはどんなのがいいか」「どんな活動をしたいか」など、全部こどもたちと話し合って決めました。
こういう計画を立てる時は、保育者がある程度決めて、そこにこどもたちの意見をちょっと取り入れるくらいだろうなと思っていたんですけど、全然違って。本当にゼロから全部作り上げるんです。こどもの意見をしっかり尊重する、そのスタイルがとても好きです。
行事だけでなく、雨の日の室内あそびなども、基本的には全部こどもたちが決めています。将来、この子たちは自分で決める力や発想力がきっと豊かになるんだろうなと感じますね。
そしてなにかを決めるときも、多数決ではなく話し合いが基本です。意見がわかれたとき、どうするかもまた話し合ったりしますが、うまくまとまらなくて難しさを感じることも多いです。
まさにフローレンスが大切にしている「シチズンシップ保育」を実践しているんですね。

そうですね。たくさんのこどもたちと関わる中でも、一人一人に寄り添う気持ちを忘れないようにしようというのは常に思ってます。
「どんな状況でもこどものやりたいを叶える保育」をずっと大切にしていきたいです。忙しいから無理、ではなくて、「こうしたらできるかも?」って可能性を探したい。
今担任している5歳児は保育園最後の年なので、特にこどもたちのやりたいことを拾って叶えてあげたいなと思っています。「ここに行きたい!」とかは、あらかじめ計画して実現できるんですが、例えば先生の人数が限られている中で「新しい塗り絵を出してほしい」とか、日々の小さなつぶやきをどうしたら叶えられるかなって最近思ってて。本当に毎日が勉強です。
0歳児・5歳児と経験してきた中で、5歳児クラスならではの難しさはありますか?

生活の中では、小学校を意識して先を見据えて自主的に行動することができるよう日々声がけをしています。給食は20分で食べれるようにならなければいけないし、時計を見て動けるようにならなければいけないし、自分の持ち物の管理もできるようにならなければいけない。
こどもが先を見据えて行動できるよう、日々一緒に取り組んでいますが、なんでも自由にやりたい時に好きなことができる環境の中で過ごす今の生活と、自分のやりたくないことでもやらなければいけない、決められたタスクを決められた時間にこなさなければならない小学校生活を見据えての生活習慣を整えることの両立が難しいと感じることもあります。
でも、そのバランスをどう取っていくかにおもしろさも感じています。例えば、「今日はお外行きたくない」と言う子にどう声をかけるか。体力づくりの面も考えると外には出てほしいけど、無理やりにはしたくないんです。
だから、「お外にたくさん出て運動することで身体がつくられる大事な時期だから、保育園に5日間来る中で、好きな曜日でいいからお外に出てほしいんだけどどうかな?」と、みんなとサークルタイム(※)で話し合ったりして。一人ひとりが納得して行動できるように工夫しています。
※サークルタイムとは
園児と保育者が輪(サークル)になって話し合う時間のこと。保育者がファシリテーターとなりますが、全員で集まることもあれば、年齢ごとに行うこともあります。結論が出ない日があったり、すぐに終わる日があったりと、細かいルールは設けずに進めていくのが特徴です。
幼児クラスでは、様々なテーマで毎日実施しています。相手を知り、思いやりの心を育てるとともに、「小さなことでも自分たちで決める」という主体性を大切にする取り組みです。
大人の「やりたい」も、こどもと共有することはありますか?

こどもたちの「やりたい」を叶える中で、せっかくだし保育者のやりたいことも共有してみたいなと思い、わたし自身の「やりたいこと」をこどもたちに話してみたんです。元々わたしはディズニーがすごく好きなので、園から電車で行ける距離だしディズニーリゾートラインに乗って、お弁当持って行ってランドの前でピクニックをしようっていう企画を考えて。「カチューシャ持ってきていいよ!」って言ったら、「行きたい!」ってこどもたちも乗り気になってくれて。
実際行ってみると普段はディズニーにはあまり興味のない子も、保育園の友達や先生といける特別感に終始目を輝かせていて、みんなとても楽しそうでした。卒園間際に最高の思い出ができました。
「先生もやりたいことがあるんだ」と話せるのは、すごくありがたい環境だなって思います。どの先生も「いいじゃん、やってみなよ!」って背中を押してくれて、「やめたほうがいいんじゃない?」って言う人は本当にいません、やってみようと思うことをみんなが受け止めてくれる環境なんです。そうじゃなかったら、わたしのような経験が浅い人は言い出せなかったかもしれませんね(笑)。
これは挑戦したな、と思ったことはありますか?

散歩リーダーを初めてやった時のことが印象に残っています。みんなの先頭に立って、こどもたちの点呼を取ったり誘導したり、安全確認をしながら全体を見守る役割なんですけど、わたしは方向音痴だし、今までリーダー的な経験がなくて、挑戦することに不安を抱えていました。
いつかはやらないとと思いつつ、ずっと先輩たちの後ろについていくだけでした。でもある日、先輩スタッフに、「やらないと覚えないよ」と背中を押されて、思い切って挑戦しました。
道を間違えたりうまくいかないこともあったのですが、背中を押してくれた先輩方がたくさんフォローしてくれました。そして実際にやってみると、信号の見方やこどもの列の崩れ方、水分補給のタイミングなど、前に立って初めて気づくことばかりで。責任も感じたし、やりがいもありましたね。
今後チャレンジしていきたいことはありますか?

「シチズンシップ保育」がもっと広がればいいなと思っています。わたしの母が勤める園でも取り入れたいけど、どうしたらいいかわからず困っているようで。
長年「一斉保育」をやってきた園でも、こどもたちの主体性を尊重する保育ができるように、フローレンスで実際にシチズンシップ保育をやっている人が、他の園に伝えに行くような仕組みができたらいいなと思っています。
フローレンスにはあなたの熱い想いを実現する場所があります。親子を取り巻くさまざまな困りごとを、わたしたちと一緒に解決していきませんか?