対談・インタビュー

娘を5年間介護し抱いた、障害児保育への強い思い

対人支援職(保育スタッフ)
    中途入社訪問型障害児・医療的ケア児家庭支援

医療の進歩により、救うことのできる小さな命が増え、それに伴って障害児や医療的ケア児の数も年々増えています。

そして、そのご家族は、24時間ほとんど自分の時間を持てないまま、ほとんどお子さんから目を離せず過ごしている方が多いのが実情です。

でも、お仕事や、自分がやりたいことを諦めないでください!

フローレンスでは障害があっても障害がなくてもすべてのお子さんが保育を受けられる社会の実現を目指して、5年前より「障害児保育園ヘレン」、その翌年からは「障害児訪問保育アニー」を運営しています。

今回は、ご自宅で障害があるお子さんをお預かりする「障害児訪問保育アニー」の保育スタッフをご紹介します。

自宅に毎日来る先生ってどんな人なの?

子どもとどんな風に過ごしているの?

そんな疑問を解消していただけたら嬉しいです。

インタビューに答えてくださったのは、渡邉みき先生。

2014年9月に病児保育のスタッフ“こどもレスキュー隊員”として入社しました。翌年、「障害児訪問保育アニー」が新規事業として立ち上がると、保育スタッフに志願。

入社1年足らずで自ら異動を決意した裏には、娘さんの介護を通して抱いた強い思いがありました。

脳腫瘍の娘の在宅介護を経験。「私が頑張らなくちゃ……」

私が資格を取って保育の仕事に携わりたいと思ったのは、病気の娘の、在宅介護の経験がきっかけです。

娘は5歳で脳腫瘍を発症し、10歳までの5年間、全力で病気と闘いました。

手術をするたびに様々な後遺症が出て、歩くこと・食べることができなくなりました。そして、呼吸が不安定にもなり、人工呼吸器をつけると同時に声を失いました。

「お母さん」と呼べない娘の変化にいち早く気づけなければ!と、一日中気が張って眠れない夜が続きました。

入院中は、周りに闘病仲間がいて不安な気持ちを吐き出すことができたし、緊急時には医師、看護師がいて処置をしてくれ、精神的に辛くてもどうにか乗り越えることができました。

状態が安定し、在宅介護の話が進んだ時には喜びはあったのですが、「私にできるのか」という大きな不安が大半を占めました。もちろん主人や私の両親、姉がとても協力してくれましたが、それでも日中ほぼ一人で娘を看るという責任は、母親である私の肩にのしかかり、周りの助言や心遣いが重く感じることさえありました。

またきょうだい児と向き合う時間を作ることができない自分を責めてしまい、孤独感も味わいました。

娘を看取って数年経ったとき、私自身が周りの方々にたくさん助けてもらったように、私が誰かの力になりたい。
漠然とですが「養護」に関わる仕事がしたいという気持ちになりました。

介護の経験とさらに資格があれば生かせる仕事の幅が増えるのではないかと思い、保育士の資格を取りました。

「子どもの気持ちをくみ取る丁寧な保育がしたい!」フローレンス入社のきっかけ

フローレンスに入社する前は、企業内保育室で勤務していました。集団保育のため、全員の足並みをそろえて時間に従って行動していきます。子どもは可愛いし、学ぶことも多かったのですが、一人ひとりの子どもに寄り添ってゆったりと保育をしたいと思っていました。

丁寧に1対1でお子さんに向き合える仕事がフローレンスにあると知り、病児保育の仕事に応募しました。

アニーへの異動。日々奮闘するお母さんの力になりたい

フローレンスに入社後は、こどもレスキュー隊員として、様々なお宅へ訪問。病気のお子さんに寄り添う1対1の保育をしながらやりがいも感じていました。

そんな中、フローレンスが障害のあるお子さんをご自宅で保育するという事業を始めるという話を聞きました。
障害のあるお子さんのほとんどが医療的ケアを必要とし、ご家族は不安を抱えつつ一生懸命頑張っていると思います。「お母さんが復職できない」「息抜きする時間がない」「きょうだい児の世話ができない」等、様々な「できない」を「できる」に変えたい、親御さんの気持ちに寄り添うお手伝いがしたいと、いても立ってもいられずに「異動したい!」と手を挙げました。

アニー利用者のおうち訪問スタート!力不足を痛感する日々。でも次第に光が・・・

訪問開始時は、人見知りの性格のせいなのか、お子さんはずっと泣いていました。
ご家族や顔見知りの訪問看護師以外の知らない人が毎日おうちに来るようになり、不安な気持ちになっているのだと思いました。

私に慣れてほしいけれど、泣かせてしまうのはとてもつらく、結局お父さんやお母さんに頼ることになり、自分の力不足を痛感する日々でした。

でも、落ち込んではいられません。

「いつか思いは伝わる!」を胸に、他のスタッフに相談しながら、お子さんが「この人が来たら遊んでくれる!」と受け入れてくれるまで、好きな遊びを中心にたくさん触れ合う時間をつくり、毎日訪問を続けていました。

するとある日、抱っこしても泣かなくなり、数日後にはお昼寝をするようになったのです。どちらの日も鮮明に覚えています。晴れた日にはお散歩にも行くし、泣くこともほとんどなくなりました。お子さんの笑顔に励まされながら保育ができるようになりました。

協力してくださった親御さんとお子さんの頑張りに、感謝の気持ちでいっぱいです。

チームでお子さんの成長を見守る

アニーでは私のような保育スタッフ以外にも看護師などが事務局に常駐しており、いつでも相談することができます。

定期的に訪問看護も行っています。他の保育スタッフや事務局スタッフの巡回訪問もあり、まさにチームで保育をしています。

それ以外にも、他事業所さんとの合同カンファレンスがあります。お子さんの状態を看護や保育など、様々な観点から見守っています。

1対1だからこそ、お子さんに深く関わることができ成長していく姿をみることができます。個々に合わせた保育ができます。

困ったことがあっても、アニーのチームメンバーがいるのでとても心強いです。

「アニーがいるから大丈夫」と思ってもらえる誠実な保育をしたい

アニーでは、地域の保育園での交流保育により、同じ年齢の子どもたちと触れ合う時間をつくっています。

親御さんが大切に育ててきたお子さんをお預かりしているという気持ちをいつも胸に、緊張感を持ちながらもお子さんと一緒に新しいことにチャレンジする意欲を持って保育していきたいです。

また「アニーの渡邉さんがいるから大丈夫」と思っていただけるような存在になれるように、誠実に向き合っていきたいと思います。

障害があってもなくても同じように保育を受けることができる。親御さんが仕事を諦めずに社会復帰することにより、「私」として輝く場所がある。

そんな社会なるよう私自身も「チャレンジ」していきたいです。

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