今年度、新卒事務局スタッフとして入社した鶴見です。
フローレンスでは新卒事務局スタッフ研修の1つに「保育園実習」というものがあります。
保育園実習を行う目的はフローレンスWAY-私たちの行動指針-の中にある「飛び込め!われらの現場に」を体験し、現場に行き、現場を体感し、現場で学ぶためです。
現場での学びを深めることを大切にする保育園実習では、何度も心を動かされる瞬間に出会いました。
特にこどもの可能性を引き出そうとする保育士の姿に感銘を受ける場面が多く、こどもとの関わりの中にたくさんの意図や思いが込められていました。
では、保育士はどのようにこども達と関わっていたのか。シチズンシップ保育のもと行われているフローレンスの保育の魅力について今回お伝えします!
フローレンスの保育理念「シチズンシップ保育」
まず、フローレンスの保育園では保育を行うにあたって大切にしている理念があります。
「私たち保育園は、みんなの未来をつくることに自ら参加し、貢献し、そして楽しむ心を育みます。」
この理念を実現するための保育を「シチズンシップ保育」と呼んでいます。
シチズンシップという言葉には「一人ひとりが社会の一員として、よりよい社会の実現のために積極的に多様な人々と協働して課題解決する資質・能力のこと」という意味があります。
変化の大きいこれからの社会で一人ひとりがシチズンシップを発揮し行動していくには、就学期以前から少しずつ自分で考える力、他者と関われる力が育まれる必要があるとフローレンスは考えています。
自分で考える力、他者と関われる力というのは「非認知能力」と呼ばれており、学校教育で取得する学力とは異なった能力のことを指します。
この非認知能力を獲得するには、保育者が教え授けるよりも、こども自身が主体となって身につけていくものであるため、保育者中心の保育からこども中心の保育を行う工夫が必要です。
では、シチズンシップ保育を通して実際に行われるフローレンスの保育現場とは…?
これから私が保育園実習を通して現場で学んだことをお伝えしていきます!
チームで保育をするからこそ、こども一人ひとりと向き合える
フローレンスのおうち保育園は、0~2歳児を対象とした定員人数12名の少人数保育を行っています。
こどもたちの気持ちを大切にするにはチームワークが不可欠。
私は先生同士が連携して、「チームで保育をする」という瞬間に何度も出会いました。
例えば、こどもが大好きな電車で遊んでいた時に先生と一緒に遊びたくて「先生、見て!この電車持って!」と言うんです。先生は呼ばれた時に「分かった、じゃあ持ってるね!」と、その子の”したい!”にすぐに答えることができます。
また、ある日の外活動の時間では、普段お散歩カートに乗っているYちゃんが歩きたがっていたので、先生方で話し合った上で、今日は歩こう!と決まり、公園までの道のりをゆっくりと歩いていきました。
これらの何気ない瞬間に、少人数保育の良さがつまっているのです。
それは、こどものやりたいに応えられるということです!
大規模幼稚園に以前勤めていた保育者に少人数保育の魅力を聞くと、
「一人で何十人ものこどもを見ていると、『ちょっと待ってね』や『また明日しようね』と声掛けする機会が本当に多くて。意外とこの言葉をこどもたちは覚えていて、こどものやりたいを叶えられなくて心苦しい時が多々ありましたね。こどもたち一人ひとりにきちんと向き合えていたかと聞かれるとそうではなくて…。全体の方向性を考えることの方が多かったので、一人ひとりにきちんと向き合える少人数保育は働いていて本当に楽しいです。」
と話してくれました。
おうち保育園では、人数が少ないため、「ちょっと待ってね」と保育者が言う機会があったとしても、他の保育者が対応したり、作業などのやることが終わった後には、きちんとその保育者が向き合うことができます。
そのため、こどもたち一人ひとりに向き合えるのです。
まさに「チーム保育」です!
向き合ってくれる大人がいるというのはこどもにとって非常に大切なことです。
人との信頼関係を築く上で、大人がこどもの反応に対して対応するかしないかは愛着関係にも関わる問題だからです。
そして、この愛着関係は将来の自己肯定感にもつながっていきます。
こどもにとって重要な愛着関係を育む時期に、しっかりと向き合うことができるフローレンスの保育園は、こどもにとっても保育者にとっても素敵な場所であると実感しました。
否定ではなく問いかけ
Aくんが遊んでいるおもちゃの電車が気になったのか、Bくんが手をのばす場面がありました。
この時、Aくんがもともと遊んでいたものを取ろうとしたBくんが悪いため、「Bくんだめだよ!それはAくんが遊んでた電車だから。返してあげて?」と声掛けをするのが一般的な考えだとします。
しかし、私が園実習で出会った保育士はこう言葉がけをしていました。
「Bくん、その電車は今Aくんが遊んでいたよね?もし、Bくんが遊んでいた電車を取られたらどんな気持ちになるかな?」
と声をかけた後に、
「その電車で遊びたいなら先に口で伝えてみよう!Aくんに『貸して』って一言言えたら素敵だね!」
無理矢理取ろうとしたBくんをただ否定するのではなく、Bくんの気持ちを汲み取り、その上でどう行動をとると良かったのか提案する。
私はこの光景を見て、保育士の対応にびっくりしました。
否定せずとも正しいことを伝えられる技術というのは、そう簡単に得られるものではありません。
感情的にならず、こどもの様子や気持ちに寄り添って柔軟に対応する保育者を見て、シチズンシップ保育の考えが現場に行き渡っていると実感しました。
教えるではなく引き出す
フローレンスの保育で培ってほしいと考える非認知能力は、保育者が教え授けるよりも、こども自身が主体となって身につけていくものです。そのためには、保育者中心の保育ではなくこども中心の保育が必要なのです。
私は実習を通じて、こども中心の保育とは「教えるではなく引き出す」であると感じました。
教えるではなく引き出すことの捉え方には、「大人の都合を押し付けるのではなく、こどもたちの意思を尊重する」「みんながしているからといって強制するのではなく、その子が今どうしたいのかを探る」というのがあると思います。
これらが園では随所で見受けられました。
例えば、給食の時間では、一人ひとりの成長具合によって食べ方や食べる順番、食べるスピードがバラバラだったのです。こどもによっては飲み込むのが苦手な子がいたり、好き嫌いの激しい子もいました。
さまざまなこどもがいる中で、保育者は一人ひとりの特徴を理解し対応しています。
この子は飲み込むのが苦手だから、一気に食べようとしないかを意識して見たり、好き嫌いの激しい子に対しては「これはどう?」と聞いて、食べるか食べないかをこどもに決めさせていたのです!
給食の時間だけではなく、おやつの時間、遊びの時間など常にこども一人ひとりの意思を尊重し、その子にあった対応をしていました。決して無理強いをさせるのではなく、質問を通してどうしたいかこどもの気持ちを聞きながら提案したり、近寄ってみて様子を伺ったりと、真剣にこどもの様子に目を向けているのが印象的でした。
そんな保育者の様子を間近で見ているからなのか、おうち保育園のこどもたちは自分の口で何がしたいかを伝えようとし、その伝え方がうまくいかなくとも、少しずつ少しずつ前を向いて成長しているように見えました。
保育者はこどもを育むチーム
少人数保育を行うおうち保育園では、異年齢保育を行っています。
そのため、保育者は特定のこどもたちとの関わりだけではなく、園児全員と関わることができ、一人ひとりの性格や特徴を知ることができます。
そのため、保育者全員で情報を共有することができるのです。
例えば、入園したばかりで人見知りなTちゃんが、ある日の朝の会で名前を呼ばれて、大きな声で「はあい!」と手をあげた時がありました。その時に、保育者同士で「今日は言えたね!」「Tちゃんとってもいいお返事だったね!」と保育者同士で喜びを共有し褒めあえる、そんな瞬間を目の当たりにしました。
日頃から保育者同士がコミュニケーションを取り合い、みんなで保育を行っていく姿勢というものを感じました。
さらに、こども中心の保育を行おうと工夫しているため、常に保育者はこどもの目線に立って考えています。
「あの子は寂しがりやだから、この場面ではどう関わるべきか」、「この子は思い通りにいかないと泣いてしまう。だから、他の子とどう関わったらいいのか」という風に。
しかし、ここで保育者ひとりが抱え込むのではなく、異年齢保育を行っているため、みんなで共有し報告、相談という環境が整っています。よって、保育者はチームとなって保育を進めているのです。
実習では、毎日保育者同士が話し合い、連携、協力しており、笑顔の絶えない職場という印象が強くありました。
私は現場に足を運んで、日々変化するこどもたちに寄り添い、向き合い続ける保育者の姿を通して、流れをつかむこと、様子を伺い些細な変化に気づくこと、日々自己研鑽を繰り返しチームでの話し合いを怠らないこと、自分の保育感を大切にするなど本当に多くのことを学びました。
こうして学べたのも、保育者が真剣にこども達に向き合い、こどもの未来をつくろうと誠実に向き合っているからだと思います。
おうち保育園には、おうち保育園にしかないこどもとの関わり方があるということを、園実習をとおして学ぶことができました。