この子とどうやって遊んであげたらいいか、最初はわからなかったんです
フローレンスが医療的ケア児のご家庭向けに提供するシッターサービス「医療的ケアシッター ナンシー」を利用している親御さんが、在宅生活を始めたばかりの頃を振り返って、こうお話ししてくれました。
お話を聞いたのは2歳(2024年6月現在)の医療的ケア児、Kちゃんを育てるママ。Kちゃんは重症心身障害児で、生まれてすぐに気管切開の手術を受け、今は人工呼吸器と経管栄養(胃ろう)という医療的ケアが必要です。
Kちゃんのママは出産後に育児休暇をとっていましたが、預け先の保育園が見つからずに在宅でできる仕事に転職。今はナンシーを利用しながら働いています。
「医療的ケアシッター ナンシーを利用し始めて、仕事に集中する時間ができたことに加え、こどもの『好き』が発見できたことにすごく感謝しています」こうKちゃんのママが語るナンシーのサービスとはどのようなものなのでしょうか。
今回の記事では、ナンシーのサービスについてや親御さん、お子さんの変化についてなどを具体的に紹介していきます。
医療的ケアシッター ナンシーとは
医療的ケアシッター ナンシーは障害児・医療的ケア児家庭に、看護師が訪問し、医療的ケアと遊びや発達支援を行うサービスです。看護師が医療的ケア児や障害児のご自宅に伺い、お子さんに合わせた遊びなどの療育をしたり医療的ケアをしたりして一緒に過ごします。
【利用者に聞きました!】ナンシーを利用して何が変わった?
Kちゃんのママは、ナンシーを利用してから「自分の生活」と「こどもの生活」両方にいい変化が生まれたといいます。
「こどもが退院して在宅生活を始めたばかりの頃は、自宅で利用していた支援は訪問看護だけでした。でも、それでは仕事がままならなくて。在宅でこどものケアをしながらだと、集中して仕事をすることができません。医ケア児受け入れの保育園も探しましたが空きがありませんでした。そこでナンシーの利用を始めることにしたんです。ナンシーが来てくれる日は、3時間ほど自分の仕事に集中することができます。こどものケアをしながらだと離席する度に思考が中断される感覚がありスムーズに進められずストレスに感じることもあったのですが、それがなくなってすごく仕事がしやすくなりました。」
「それから、こどものことも、ナンシーを利用し始めてからもっとよく分かるようになりました。退院してからは正直、わたしたち夫婦はケアのことでいっぱいいっぱいで…せっかく自宅で暮らせるのに、寝たきりのこどもとどう遊んだらいいのかもわからずに、関わり方を模索していました。でもナンシーが来てくれるようになって、いろんな遊びや経験をさせてくれるようになって、娘の好きなことがたくさん見つかったんです。キラキラするものが好きなんだな、とか、こういう色が好きなんだ、とか、こどもの『好き』をたくさん見つけられました。看護師さんの関わり方を見て、こう遊んであげたらいいのか、というのがわかったのもすごく嬉しかったです。この間は動物公園にも一緒に行ってもらえて、また娘の経験の幅が広がりました。それをきっかけにわたしたち家族でも行けるかな、と思えるようになりました。できることが増えていくのは親として嬉しいです。」
こどもに興味を持って関わるからこそ「成長」がわかる
このように利用者の家庭を支えている医療的ケアシッター ナンシー。その屋台骨となっているのは、医療的ケア児の自宅に訪問する看護師です。医療的ケアについてはもちろんプロですが、その上遊びも行い「こどもの成長」も支えるナンシーのナース。病院で働く時とは求められることも異なり大変なのでは、と考え、ナースに直接話を聞きました。
お話を聞いたのはKちゃんの担当ナースの一人、池田さんです。
「ナンシーの仕事は大変じゃないかと言われれば、正直、大変なこともあります。夏の訪問だと炎天下の移動もあり、きついと感じることも。それでもわたしがこの仕事を続けているのは、こども一人一人にじっくり関われることがものすごく魅力的だなと思うからです。
わたしは以前小児科病棟で働いていたのですが、当時は日常業務が忙しすぎて、『この子の成長を見守る』とか、そこまで考えられませんでした。だからナンシーで働き始めた時は、どう関わったらいいんだろう、とわからないことだらけでのスタートだったんです。でも先輩たちの関わり方を見ながら自分でも実践しているうちに、こどもが返してくれる反応がわかるようになってきました。そうやって一人のお子さんにじっくり関わっていくとその子のことがよく知れるし、だからこそ成長に気付けるんだなということもわかりました。中には寝たきりの状態だった子が座れるようになった、歩けるようになった、というケースもあります。そんなふうにこどもの成長を見守れることは小児看護の醍醐味ですし、1対1でじっくり関わるナンシーだからできることかなって思います。」
「それに、親御さんから嬉しい声を聞くこともやりがいの一つです。『ナンシーのおかげでこういうことができました』と言われると本当に嬉しいですし、わたしたちが訪問すると『買い物行ってきます』と出かけられる親御さんを見ると、少しは自分の時間が作れてるのかなと思って嬉しくなります。医療的ケア児の親御さんが一人で外出できる機会はそう多くありません。わたしたちがいる時だけでも、ほんの少しでも、休めるとかしたいことができるとか、そうして親御さんの笑顔が増えているなら嬉しいですね。」
親とこどもの「できること」を増やせる医療的ケアシッター ナンシー
ナンシーの利用者からは「こどもがこんなことができるようになりました」という声がしばしば寄せられます。
「ナンシーと一緒に外出訓練をしてから、家族だけでも外に出られるようになった」
「こどもの『好き』が増えて遊びのバリエーションが広がった」
そしてこどもだけでなく、親の「できることが増えた」という声も。
「少しの間だけど仕事ができるようになった」
「一人でリラックスできる時間ができた」
「久々に美容院に行ってきました!」
医療的ケアシッター ナンシーは医療的ケア児にとっての「こんなこともできるね!」を一緒に見つけ、かつ親のしたいことをする時間を提供し、医療的ケア児の家庭を支えています。