対談・インタビュー

子育て家族の孤立をなくすため仲間とともに試行錯誤を続ける

ビジネス職
    中途入社リーダー役割

フローレンスは、こどもの虐待や貧困問題、育児の孤立・孤独など、こども・子育て領域の社会課題の解決を目指すNPO団体です。これらの課題を解消するために、病児保育や保育園、障害児保育、こども宅食、赤ちゃん縁組などのさまざま数々の福祉・支援事業を運営するとともに、政策提言や文化醸成などの活動を行っています。ハイブリッドソーシャルワークもその一つで、子育て家庭の孤立解消のために、試行錯誤を繰り返しながら、事業を進めています。

この記事では、社会変革のための仕事に関心を持ち、異なる業界から未経験でフローレンスに入り、現在はサブマネージャーとして事業の成長を担う玉川孝大さんに話を聞きました。

玉川孝大

玉川孝大

エンジニアや映像プロダクションでの進行管理職を経験したのち、社会変革に取り組みたいと2022年フローレンスに入職。さまざまな困りごとを抱えたご家庭を対象に、LINEを使用した「チャット相談」と「対面での支援」を組み合わせたアウトリーチ型の新しい支援モデル「ハイブリットソーシャルワーク」を推進する事業に所属。 メンバーとして行政との調整などに取り組み、現在はサブマネージャーとして事業全体の成長に貢献している。

フローレンスに入職する前のお仕事について教えてください

新卒ではシステムエンジニアとして就職し、銀行のシステム開発などを担当していました。3年ほど勤務したのち、思い切って業界や業種を変え、広告などの映像制作をしているプロダクションに転職したんです。そこでは、プロダクションマネージャーとして、5年ほど進行管理を担当しました。このような経歴なので、フローレンスの中では珍しいキャリアだとよく言われます。

フローレンスに関心を持ったきっかけや転職の決め手はなんでしたか?

元々こどもが好きで、大学時代はこどもと遊ぶサークルにも入っていました。社会に出てからは、こどもとは関係のない業界で働いていましたが、当時はハードな労働環境でもあったんです。そんな環境で働いていたなか、自分にこどもが生まれたことがきっかけになりました。

子育てで大変な思いをさせてしまった妻の姿を目の当たりにしていたので、自分たちのような家庭がたくさんあると感じましたし、支援してくれる人たちの仕事にも興味が湧いてきました。そのころに、フローレンス会長駒崎の著書の『政策起業家』を読んで、広い視点から社会変革を促していく、フローレンスの活動に惹かれるようになったんです。

子育て家庭への支援というと、まずは目の前のご家族を助けたいという考え方もあると思います。それはもちろん重要なのですが、自分たちの手の届く範囲でとどまるのではなく、社会全体に対して働きかける仕事をしたいと感じたんです。なので、自分の働き方を変えるという点に加え、社会変革のための仕事ができる環境を求めて、フローレンスに入職しました。入職してからは、一貫してハイブリッドソーシャルワークの普及に取り組んでおり、現在はサブマネージャーを務めています。

ハイブリッドソーシャルワークとは、どのような仕組みでしょうか?

ハイブリッドソーシャルワークというのは、子育て家庭とLINEなどのSNSでつながりを持って、全国各地にいる「デジタルソーシャルワーカー」が相談を受けたり、必要に応じて地域や行政の支援につなげたりする仕組みです。

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これは2つの社会課題を解決するための取り組みです。1つ目は、支援が必要なのに、支援につながっていない家庭が数多くあるという課題です。子育て家族のなかには、育児に悩んでいたり、助けが必要だったりしても、孤立してしまっていて、支援が届かない場合があります。日本の福祉サービスは、行政の窓口で申請が必要な場合が多く、物理的・心理的なハードルが存在しているんです。ハイブリッドソーシャルワークでは、利用者にとってハードルの低いLINEなどで最初の接点をつくり、ゆるやかに関係を構築しながら、地域の福祉サービスなどの情報をプッシュ型で提供し、必要な支援へつないでいきます。

2つ目の社会課題は、子育て家庭への支援の地域間格差です。特に地方では、支援を担う社会福祉士や精神保健福祉士などの専門職が足りていません。そのため、デジタルをうまく活用して、全国の専門職の方の力を借りる必要があるんです。支援はオンラインのみで完結するものではないので、必要に応じて対面での支援も組み合わせながら、利用者のニーズに合った支援を継続的に提供していきます。

新しい仕組みを世の中に広げていくためには、大変なことも多そうですね

ハイブリッドソーシャルワークを開始したころは、フローレンスの自主財源で運営していましたが、持続可能な形で全国に広げていくためには、公的に制度化されることが重要です。その目標に向かって、ハイブリッドソーシャルワークの成果を自治体にアピールする過程はなかなか大変です。行政の意思決定やコミュニケーションは、自分がそれまでに経験した民間企業とは全く違いました。ただ、フローレンスには自治体とのコミュニケーションを得意としている仲間がたくさんいるので、具体的にアドバイスをもらいながら、ブラッシュアップを続けました。

デジタルの力で社会課題を解決していくにあたって、試行錯誤したエピソードを教えてください

最近の取り組みでは、AIの導入が印象的です。利用者への1次対応にAIを活用できないかと考え、検証を繰り返しながら、実装するまで辿り着きました。従来、この1次対応は社会福祉士や精神保健福祉士など「ソーシャルワーカー」と呼ばれる専門職が対応していた業務なので、AIが利用者にどの程度のレベルで返答できるのか、わからないことだらけでした。プロダクトを磨くため、過去の相談履歴を読み込ませたり、適切な生成AIへの指示を模索したりしながら、調整を続けました。

また、プロダクトができたとしても、ニーズがあるのか、実際に利用者がどのように使うかも未知数だったので、仮説を立てながら検証をしていきました。もちろん、地域の支援につなぐなど、専門職でなければ対応できない業務はあるので、どのタイミングでAIから専門職に引き継ぐかの役割分担も重要になります。

実際に導入してみると、利用者にとっては人に話しかけるよりも、AIのほうがハードルが低く、最初の接点を持ちやすいことがわかってきました。「こどもを強く叱ってしまう」など、人には言いにくいような本音を伝えてくれる利用者もいるんです。さらに、利用者との関係構築の時間を短くできるなどのメリットがあるようで、手応えを感じています

ハイブリッドソーシャルワークやご自身のキャリアの将来像はどのようにイメージしていますか?

ハイブリットソーシャルワークは全国に普及させるフェーズに入っていますが、それゆえの難しさもあります。世の中のニーズは変化しますし、新しい技術もでてきます。そのためプロダクトは常に開発をし続けなくてはなりません。一方で、一定の段階でプロダクトを固めて、広く展開していく必要もあります。今はサブマネージャーなので、そのバランスをとることが重要だと考えて、業務に取り組んでいます。

さらに全国どこでも使えるようにするには、公的な財源も必要になってきますから、必要性を社会に対してアピールしていくことも重要です。ハイブリッドソーシャルワークは、すべての親子を”孤立”させない、あたらしい社会インフラになることを目指しています。そのためには、今後さまざまな壁を乗り越えていくことが必要になるだろうと考えています。その過程で、自分ももっとリーダーシップやメンバーをサポートする力をつける必要がでてくるはずです。なので、ハイブリッドソーシャルワークを推進する過程で、おのずと自分自身のキャリアも、事業とともに成長できるのではないかと考えています。

たくさんの仲間と試行錯誤を繰り返しながら事業を推進している様子が伝わりました。フローレンスはどのような雰囲気でしょうか?

フローレンスは本当に優しいメンバーが多いです。ライフステージもさまざまなので、お互いに尊重し合うカルチャーが根付いています。 社会を変えようと活動している団体なので、ご自身も柔軟に変化し続けられる方が向いているように感じます。
また、問題に直面した時に、目の前のことだけでなく、その背後にある背景や社会の構造的な問題を感じ取って、アクションに移せる力が必要です。自分も未経験で、異なる業界から入ってきて、勉強しながら取り組んできました。学ぶ環境は整っていますし、周囲もサポートしてくれます。

フローレンスでは、こどもたちの未来のためにさまざまな事業を展開しています。未経験だからこその役割も見つけられるはずですので、ぜひさまざまなキャリアの方に、事業を推進するポジションにトライしてみてほしいです!

フローレンスでは、ビジネス職・コーポレート職。テクノロジー職など、事務局スタッフの採用を行っています。今を生きるわたしたちと未来のこどもたちのために、新しいあたりまえを一緒につくりませんか。

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