さまざまな事業で社会課題の解決に取り組むフローレンス。
フローレンス流 ”社会の変え方” は、単に事業を立ち上げるだけではありません。
時にはロビイングや政策提言を行い、社会の仕組みや制度そのものを変えることなど、手法は多岐にわたります。
今回は、双子・三つ子などの「多胎児」の育児に関する社会課題を発見し、その解決のためにさまざまな活動を行い、「ふたご助っ人くじ」の事業を立ち上げるに至ったスタッフの想いを紹介します。
市倉加寿代
2017年に認定NPO法人フローレンスに入職。2019年、個人で設立した「多胎育児のサポートを考える会」の代表として、フローレンスと共に多胎児家庭アンケートを実施。多胎育児への支援拡充を求め、関係省庁・機関への要望書提出などの活動に取り組む。 2020年11月に政策コンテスト「マニフェスト大賞」にて最優秀成果賞受賞、2022年4月に多胎児家庭専門の訪問サポートサービス「ふたご助っ人くじ」が運用を開始。
フローレンスへの入社のきっかけについて、そしてこれまでのキャリアについて教えてください。
産休後、仕事と育児の両立に悩んでいた頃、駒さん(フローレンス会長駒崎の愛称)のSNSでフローレンスを知りました。当時、生活していく上で、仕事と育児という切っても切れない暗闇の中で悩んでいたからこそ、社会課題解決に自分も何かできないかと考え入社しました。
これまでのキャリアは、美容師と図書館の司書という全く違った分野の経験しかありませんでしたが、フローレンスの仲間たちに助けられ、同じ悩みやモヤモヤを持った方々と出会い、わたしたちのこどもやそのこどもが生きていく次世代へ”明るい未来”を受け渡すことを目標に、さまざまな課題解決を目指して仕事をしています。
まずは、「ふたご助っ人くじ」を立ち上げようと思ったきっかけについて教えてください!
わたし自身は多胎児育児の当事者ではなく、幼い頃からの友人が双子を出産し、「多胎児育児のリアル」を目の当たりにしたことが始まりでした。
当時、その友人の3歳のこどもと1歳の双子の保育園の降園に付き添った時、3人分の荷物とベビーカーとしっかりとは歩けない双子を抱え、10段ほどの園の階段を前に困り果てる彼女を見て、これが毎日繰り返されている現実なんだと言葉もでないような気持ちになったことを今でも鮮明に記憶しています。
帰宅後も一息つく間もなく、ご飯にお風呂にとあっという間に1日が終わっていく。
「育児が楽しいって、今は全く思えない」「できるかもと思うから悲しくなる、もう全部諦める」と話してくれたこと。
とても愛情深く、真剣にこどもと向き合っている彼女からのこの言葉に、本気でこの状況を変えたいと思ったのです。
すぐに多胎児育児を経験する方々へWEBアンケートをとりました。開始1日でなんと200件を超えるお声が集まり、友人と同じようにどこへもぶつけることのできなかった思いを聞かせていただき、状況を想像しては涙が止まりませんでした。
身近な声をきっかけに「社会を変える」という行動につながったのですね!
多胎育児の大変さ、壮絶さを目の当たりにし、この大変さは社会が生み出しているのでは!?と考えました。「外出して申し込みをする」ことを前提に様々な行政サービスが設計されていいたり、そもそも多胎児の出産育児に関する情報がほとんど流通していなかったので、この構造が「同じ月齢の子どもを2人育てる」という事以上の負担を生んでいることに気づきました。
一人一人が社会の当事者として、目の前の課題を「自分ごと」ととらえて解決していかなければならない、課題を放置したままその課題を次世代に渡していくわけにはいかない!と強く思うようになりました。
ただ、フローレンスに入社するまでは、政策起業(※)という言葉も知りませんでした。
新規事業開発についての専門知識や経験もあるわけではなかったので、まずは何から始めたらよいのか、全くわからない状態からのスタートでした。
※政策起業とは、政治家でないわたしたち一人ひとりが政治や政策を担う主体として参画し、知恵を出し、手を動かして実際に制度づくりや社会のルールに影響を与えていくこと
事業の立ち上げの際に不安はなかったですか?
どうすればこのような社会課題が解決するのか…と、正直不安はたくさんありました。
けれども、フローレンスには、社会に対して問題提起する方法やノウハウを持っているメンバーがたくさんいます。
「新規事業開発の経験がないわたしでもきっと何かできるはず!」
「問題に気づいたなら声をあげないといつまでも繰り返されてしまう!」
そう思い、立ち上がることを決意しました。
そんなわたしの気持ちに周りの仲間たちも共感してくれて、「多胎児向けのベビーシッターサービス、絶対必要だよ!」と、ゴールに向かってより良い方向に軌道修正できるようなアドバイスをたくさんくれました。
事業立ち上げ経験ゼロのわたしにとって、とても有り難かったです。
「ふたご助っ人くじ」は友人の子育てがきっかけとなりましたが、社会には「あれ?なんで?」と思うことが皆さんのまわりにもたくさんあるのではないでしょうか。
小さくても大きくても、そんな出来事を見過さずに、変えていこうよ!改善できるかも!実現できるかも!と行動していくことが大事だと思います。
「ふたご助っ人くじ」を立ち上げて、どんな変化がありましたか?
多胎育児をしている友人の、「こどもが新生児の頃のことは辛すぎて思い出したくない」という言葉がとても心に引っかかっていたんですが、「ふたご助っ人くじ」の利用者の方から、「「ふたご助っ人くじ」のおかげで、これまでの人生の中で一番楽しい時間を過ごせました」と言ってもらえて、救われました。
かつて自分がしていた友人へのサポートがフローレンスのビジネスになり、収益にもなり、今では多くの多胎児家庭がサービスを利用してくださっていることにはやりがいしかありません。
また、政策起業はもちろん、新規事業の立ち上げ経験もなかったわたしでしたが、「双子ベビーカーにこどもたちを乗せてバスで好きな場所にお出かけができる」というあたらしい当たり前の社会を実現させることができました。
決してわたし一人の力で実現できたことではないですが、「変えたい!」と本気で思う人にしか社会は変えられない、志を共にする仲間がいるからこそ実現することができた!と実感しました。
政策起業へと動き出してからのこの3年間は、自分の人生で一番楽しい期間だったかもしれません!
ついに、都内のバス全路線で「双子ベビーカーを折りたたまずに乗車」できるように!#助けて多胎育児
今後どんな社会を実現したいですか?
これからの未来、誰もがいろいろな立場の人の身になって少しでも寄り添える世の中にしていきたいですね!
例えば、双子ベビーカーが通りやすいように道幅を広くしたり、双子ベビーカーでバスに乗車した方へ「ごゆっくりどうぞ」「ここどうぞ」と声をかけるなど、大きなことだけではなくちょっとした行動でも良いと思います。
誰かの大変さに思いを寄せて何かを改善することは、自分にとっても、そして誰しもが生きやすい社会をつくることにつながっていると思っています。
「自分は関係ない」ではなく、誰もが自分事として目の前の困りごとや課題を置き去りにせず、自分にできることをアクションしていく、そんなやさしい社会にしたいですし、そのための努力をフローレンスでやっていきたいですね!
フローレンスは「病児保育」「障害児保育」などさまざま現場をもっているので、現場で起きている新たな社会課題に気づくことができます。
現場と隣接しているフローレンスだからこそ、新たな社会課題と常に向き合い、一つずつ解決していき、目指す社会を実現していきたいと思っています。
フローレンスでは、ビジネス職・コーポレート職。テクノロジー職など、事務局スタッフの採用を行っています。今を生きるわたしたちと未来のこどもたちのために、新しいあたりまえを一緒につくりませんか。