フローレンスの保育園では、「みんなの未来をつくることに自ら参加し、貢献し、そして楽しむ心を育む」ことを保育理念に掲げ、「シチズンシップ保育」を実践しています。
みらいの保育園事業部では、シチズンシップを育むための具体的な保育のあり方を握っていこう!と、2023年度、1年間かけて保育現場での実践とその結果を持ち寄り、保育のありかたを深め、言語化していく取り組みを行っていくことにしました。
隔月の研修と園での実践を往復、繰り返していくことによって「シチズンシップ保育」の言語化と共通理解、保育の質の向上を進めています。
今回は5月に開催した初回キックオフと7月開催の第2回の間に行ったシチズンシップ保育要素の抽出のワークショップの様子をご紹介します。
シチズンシップ保育に必要なことってなんだろう?要素の抽出と問い立て
6月は全4回に分けて、各園のシチズンシップ保育探究メンバーの先生方に集まっていただき、シチズンシップ保育の要素の抽出と、それをもとに各園で1年間探究していく「問い」を立てるというワークショップをオンラインにて行いました。
シチズンシップ保育という言葉から連想する要素として、言葉(単語)や具体的な行動を思い思いに発言し、それをマインドマイスター(オンラインマインドマップ作成ツール)を使って展開していきます。
日常の保育の中で大切にしていることや、普段何気なく実践していることをあらためて言葉にするという作業は決して容易ではなかったようですが、先生方がそれぞれの思いを一生懸命に表現しようとする姿がとても印象的でした。
例えきれいに整った言葉ではなかったとしても、臆せずに思い浮かんだことをそのまま発言し、それを他の参加者に言葉を補ってもらったり言い換えてみたりすることで、徐々に思考が整理され、言語化することができました。そんなプロセスを間近で見させていただけたことがとても嬉しかったです。
そして、要素抽出の後は、いよいよ「問い」を立てる時間です。
シチズンシップ保育そのものにフォーカスした問いもあれば、先日のキックオフの回でも話題になった、シチズンシップ保育を行う上での保育者(大人)のあり方などについての問いも出ました。
例えば、子ども主体の保育を考えたときに、個人の思いをどこまで尊重できるかといった子どもの思いを汲み取るためのスキルに関する「問い」が立つ一方で、シチズンシップ保育を実践する大人がそれを意識して体現できているか、また保育スタッフ同士の関係性や、チームづくりについての問いも多く出ていたような気がします。
ここで出した問いはそれぞれ園に持ち帰り、園長や保育スタッフと話し合った上で、その園ごとに探究するテーマとして再度持ち寄ってもらいました。これをもとに5つのグループに分かれて、2回目以降は往還型の研修を行っていきます。
合計4回の研修を実施して感じたのは、抽出した要素にも、掲げる問いにも全く同じというものはなく、一口に「シチズンシップ保育」と言っても、捉え方や大切にしたいこと、理想とするものがそれぞれにあり、優先順位にも違いがありそうだということでした。
そもそも、保育理念・保育目標が新しくなってから今日まで、保育現場は試行錯誤の連続です。フローレンスの保育園として目指す保育と自園で実践できる保育とのギャップに悩むスタッフも少なくないでしょう。今回のワークからもわかるように「シチズンシップ保育」は、我々が思う以上に広くて、深くて、正解を見つけるのが難しいものなのかもしれないと、あらためて感じています。
これから探究を深めていく中で、シチズンシップ保育を言語化し、各自が掲げた問いに対する最適解を見つけていくプロセスを私自身も探究メンバーの皆さんとともに楽しんでいきたいと思っております。
(おうち保育園 門前仲町園長 野口 恵美子)